公開日:2020/01/21

【GT300・マザーシャシー消滅?】スーパーGTから消える「モノづくり」

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【スーパーGT】「マザーシャシーは周りに受け入れられなかった」つちやエンジニアリング土屋武士監督が車両変更の真意を語る
2019シーズンいっぱいでマザーシャシーの使用を一旦取りやめ、来季は別のマシンで参戦することを宣言したつちやエンジニアリング。土屋武士監督が、その決断に至った経緯を語った。

■つちやエンジニアリング、マザーシャシーでの参戦終了

2019年11月3日、栃木県・ツインリンクもてぎで開催されたスーパーGTの第8戦。最終戦となったレースで2019年シーズンは幕を下ろします。

GT300クラスに参戦する「つちやエンジニアリング」が、レース終了後にツインリンクもてぎ内の施設で行われたファンミーティングで2019年限りで現在使用している「マザーシャシー」使用車両での参戦を終了すると発表。

「FIA-GT3」車両の参戦が大勢となり、少数派の「JAF-GT」「マザーシャシー」参戦組であったつちやエンジニアリングの決断です。
2016年にはGT300クラスチャンピオンに輝いている実績があるのに、なぜ止めてしまうのでしょうか。

この記事では、「マザーシャシー」について紹介しつつ、2020年以降のスーパーGT・GT300について展望します。

■マザーシャシーとは何?

スーパーGT・GT300クラスに参戦している「マザーシャシー」の説明です。

マザーシャシーとは

「日本車ベースの車両の参戦を増やす」目的でGTアソシエイション(スーパーGTの運営組織)が2014年に制定
・車両のベースとなるシャシーとモノコックは童夢(日本のコンストラクター)が製作し、一般のレーシングチーム、ガレージに販売
・モノコックは一般のレーシングチームでは予算負担が難しい「カーボン製」でできている
ボディ回り・駆動系・サスペンション等幅広く改造が可能
・その他レギュレーションはJAF-GTと共通である

参照:http://www.dome.co.jp/mc/mc01.html

マザーシャシー以外にもスーパーGT・300クラスには以下の車両が参戦しています。

FIA-GT3とは

・国際自動車連盟「FIA」が設定したレギュレーションで制作された車両
・メーカーやコンストラクターによって製造された「完成車」
1台あたり6,000万円(※1)以上の購入費がかかる
・改造の範囲が狭いが、メンテナンスは簡単でお金がかかりにくい


JAF-GTとは

・スーパーGTのレギュレーションに沿って一から作られた車両
・改造の範囲が広く、日本車ベースで製作されている

■マザーシャシーの特徴

それでは、マザーシャシーの特徴を深く触れていきます。

マザーシャシーの特徴

・エンジンはGTAが指定した「4.5リッターV8自然吸気エンジン(一説には日産自動車製エンジン)」をベースに使用が可能
・コンストラクター「童夢」が製作した共通カーボン製モノコック
・ボディカウルは自由に選択出来る(但し、ベース車を生産しているメーカーに許可を貰わなければいけない)
・6速パドルシフト式シーケンシャルトランスミッションは共通部品

現在のスーパーGTは、FIA-GT3車両の普及が進んでいます。
車両を購入し、メンテナンスをするだけでレースに参加できます。

しかし、FIA-GT3車両では大きな改造や工夫ができません。
「完成品」としてメーカー側で開発と製作をするので、チーム側で独自に開発や改造ができないのです。
レース用車両の改造や工夫を売りに活躍を見せてきた参戦チームの「モノづくり」技術低下が懸念されています。

そこで、GTAが提案してきた新しい取り組みが「マザーシャシー」です。

製作にあたり大きく費用の負担となっていた「カーボン製モノコック」をコンストラクターが代わりに製作します。
製作したモノコックをチームに販売し供給して、チームの参戦コストを節減出来るというメリットがあるのです。

モノコックの製作の負担を減らし、GTアソシエイションが指定したエンジンやトランスミッションを共通部品として供給を受けます。
残るは、チーム側で走行に必要なパーツを組み込めばスーパーGT・300クラスへの参戦が可能です。

以上の経緯でマザーシャシーは誕生し、2014年に初めてスーパーGTのレースに参戦します。

■マザーシャシーの実績

2014年のスーパーGT第7戦タイ戦で、トヨタ・チーム・タイランドによる、トヨタ・86のボディカウルを被ったマザーシャシー車両がデビューします。当時ドライバーを務めたのは後に5年間つちやエンジニアリングのオーナー、監督として、マザーシャシーに携わる土屋武士氏です。

初戦は予選21位、決勝14位。シェイクダウンしたばかりのマシンでは精一杯の結果。

このマザーシャシーが後に快進撃を見せます。
2015年から、4チーム4台のエントリーで参戦が始まりました。
トヨタ・86(ハチロク)が3台と、シャシーとモノコックのみ使用したロータス・エヴォーラが1台のエントリー。

予選のポールポジションは合計3回獲得。
第6戦SUGOでつちやエンジニアリングが駆るハチロクがマザーシャシーに初勝利をもたらしたのです。

2年目となる2016年も、ハチロクが2台、エヴォーラが1台。
この年は、再びつちやエンジニアリングが駆るハチロクが躍動。
土屋武士と若手の松井孝允のコンビで快進撃を見せます。
第2戦富士で3位、第4戦SUGOで2位表彰台。第7戦タイと最終戦もてぎで連勝を飾り、見事GT300クラス王者に輝いたのです。

その後も2017年に1勝、2018年に2位表彰台を獲得。
つちやエンジニアリングのハチロクが度々、300クラスで活躍を見せつけました。

■マザーシャシーは新規チーム開拓にも貢献


2017年より、新たに「埼玉トヨペットGreenBrave」がマザーシャシーを使用したマークXのボディカウルの車両を投入し参戦。
マークXは、3年目となる2019年を脇阪薫一と吉田広樹のコンビで参戦します。

開幕戦岡山国際で決勝レース3位。
第5戦富士では初のポールポジションを獲得。決勝ではタイヤ交換での優位を活かして2位表彰台を獲得し活躍を見せます。

ボディカウルは違えど、同じマザーシャシーを使った車両は時折速さを見せてファンを沸かせたのです。

また、埼玉トヨペットGreenBraveは自動車販売店が母体のチームであり、チームクルーに販売店のスタッフが帯同しています。マザーシャシーでの参戦により、貴重な経験を積み上げていったのです。

■マザーシャシーのメリットデメリット

マザーシャシーのメリットは以下の点があります。

マザーシャシーのメリット

車重の軽さ(FIA-GT3勢は1300㎏程の重さに対し、1100㎏しかない)
・車重が軽い事でタイヤへの負担が軽く、タイヤ交換しなくても走り切れるレースがある

タイヤを交換しなくて済む事でピット作業を手短に済ませる事ができるのです。
実際、2019年の第5戦富士では埼玉トヨペットチームが「タイヤ無交換」作戦で500マイル(約800㎞)を走破し、2位表彰台を獲得しています。

反対にデメリットとしては以下の点が挙げられます


マザーシャシーのデメリット

・ストレートスピードが伸びない為、オーバーテイクが難しい
・供給されるエンジンのパワーが足りない

直線では、GT3カー(メルセデスAMGやランボルギーニウラカン、ホンダNSX、日産GT-R等)のエンジンの出力がマザーシャシーやJAF-GTの車両より優れています。
加えて標高の高い富士スピードウェイやオートポリス等のサーキットでは、4.5リッターの自然吸気エンジンでは厳しい戦いを要されるのです。

「タイヤ無交換」といった時間短縮を狙った作戦でGT3カーに対応するしか術がありませんでした。
2018年以降はレギュレーションで最低車重等が重くなるハンデが加わり、徐々にレースで苦戦を強いられるようになっていったのです。

■マザーシャシーは消えてしまうのか?

2019年でつちやエンジニアリングがマザーシャシーでのスーパーGT・300クラスへの参戦を終了。

2019年のスーパーGT・300クラスに参戦したマザーシャシー車両は2号車のロータス・エヴォーラと、5号車のマッハ車検86、52号車の埼玉トヨペットマークXです。
しかし、いずれも2020年以降は不透明。

2019年シーズン、BMWのGT3カーから乗り換えてホンダNSX-GT3を操ったARTAが見事300クラスドライバーズチャンピオンに輝きました。
マザーシャシーも含め、スーパーGT・300クラスは「転換期」に入っているのです。

2020年からGT500クラスがクラス1規定に生まれ変わり、ドイツの「DTM」(ドイツ・ツーリングカー・マスターズ)との車両レギュレーション統一で注目されています。

噂の段階で、2020年よりJAF-GT車両で新規の参戦が予定されている話も浮上。

2020年以降のスーパーGTに参戦する車両がどう入れ替わっていくのか、注目していきましょう。

◇追記(2020/1/21)

土屋 武士
本日12/5ということで、 1位→25号車という願かけで来期の使用車両を発表します! 2020年スーパーGTへはポルシェ911 GT3 Rと共に戦うことを決めました。...

つちやエンジニアリングは2020年シーズン、ポルシェ911GT3のFIA-GT3車両での参戦が決定したと発表。
心機一転、2020年シーズンのつちやエンジニアリングの活躍が楽しみです。

2020年1月10日、千葉県・幕張メッセで開催された『東京オートサロン2020』の会場で、「CarsTokaiDream28」はマザーシャシーのロータス・エヴォーラで2020年も参戦継続を表明。

2020年1月10日、千葉県・幕張メッセで開催された『東京オートサロン2020』の会場で、「埼玉トヨペットGreen Brave」はJAF-GT車両のトヨタ・GRスープラで2020年も参戦継続を表明。

#supergt #スーパーGT #マザーシャシー

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